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建設業のAI導入|「まだ空白」の今、中小の工務店が月数万円から始める実践ガイド【2026年・東海の独自データつき】
「AI導入 建設業」で検索すると、出てくるのは大手ゼネコンの華やかな事例か、建設向けシステムの技術解説ばかりではないでしょうか。無人化に近い現場の話や、専門用語の並ぶAIカメラのカタログ。しかもどの記事も「もう当たり前」「早く始めないと乗り遅れる」と急かしてきます。従業員が数人から数十人の工務店や専門工事業が本当に知りたいのは、そこではありません。「うちの規模で、いくらで、何から始めればいいのか」。その答えだけが、どのリストにも見当たりません。
先に、少し意外な結論を書きます。建設業のAIは、実はまだ「空白」です。 だから慌てなくていい。むしろ今から1つの工程で始めれば、地域で先行できます。そして最初の一歩は、数百万円の設備ではなく、月数万円から踏み出せます。この記事では、それを自分で数えた東海の独自データでお見せしたうえで、月数万円から数百万円までを一枚にした「費用の地図」を渡します。パソコンが苦手な職人さんや親方でも読めるように、専門用語は使うたびに言い換えます。
書き手は、愛知県名古屋市を拠点に中小企業のAI導入支援をしている合同会社サモテクです。特定のAI製品を推したり、他社をランキングにしたりはしません。この記事の目的は、あなたが「自分の現場の次の一歩」を自分で決められるように、地図を渡すことだけです。
結論:建設業のAIは「まだ空白」。だから今、月数万円から始める価値がある

建設業のAI導入は、見積・積算/図面と書類の読み取り/施工写真の整理・検査/安全管理/工程と人員の予測/書類の下書き、という6つの使いどころに分かれ、いずれも月数万円のツールから段階的に始められます。
多くの記事は「もう遅い」「急げ」と急かしますが、事実はむしろ逆です。あとで独自データでお見せするとおり、建設業のAIは、地域で見てもまだ本格的には動き出していません。「もう遅い」ではなく「まだこれから」。 だからこそ、今から1工程だけ始める価値があります。
大事なのは、事例をいくつ知っているかではなく、自分がどの使いどころの、どの規模の話をしているのかを先に決めることです。それさえ決まれば、探すべき相手も、用意すべき予算も、ほとんど決まります。下の一覧で全体像をつかんでください。縦が6つの使いどころ、横が3つの規模です。
| 使いどころ | 月数万円でできること | 数十万円でできること | 数百万円の設備投資 |
|---|---|---|---|
| ① 見積・積算 | 過去の見積と図面を生成AIに読ませ、概算の下書きを作る | 自社の見積形式に合わせた積算の補助を仕組み化 | AI積算ソフトを本格導入し、図面から数量を自動で拾う |
| ② 図面・書類の読み取り | 紙や手書きの書類をAI-OCRで文字データにして試す | 定型の書類の読み取りと入力を自動化 | 図面電子化・書類管理のシステムを構築 |
| ③ 施工写真の整理・検査 | スマホの現場写真を生成AIで仕分け・整理 | 配筋や出来形などの写真チェックを一部の現場で試す | AIの画像検査を検査の流れに組み込む |
| ④ 安全管理 | 危険な行動のチェック項目を生成AIで整える | 既存のカメラ映像を一部だけAIで確認する | AIの危険検知カメラを現場に設置 |
| ⑤ 工程・人員・需要の予測 | 過去の受注と工程を表計算とAIで見える形にする | 繁忙期の人繰りの見通しを1現場で試算 | 工程・人員管理のシステムと連携 |
| ⑥ 書類の下書き(生成AI) | 日報・議事録・施工計画書・KY・求人票の下書き | 自社のひな形に沿った下書きを定型化 | 施工管理システムに生成AIを組み込む |
この表の左端の列、つまり「月数万円でできること」から手を付けるのが、中小の建設会社にとって一番現実的な入り口です。まずは自分の座標を「どの行の、どの列か」で言えるようにしてみてください。
あわせて読みたい:AI導入の進め方|中小企業が失敗しない手順(全国版)
【独自データ】東海の建設業は、AIに予算を張っていない(まだ)
東海の建設・現場系の会社がいまお金を張っている先は、塗装ロボットやICT施工、図面の電子化といった「設備と、紙のデジタル化」に集中し、AIそのものを掲げた採択はまだ見当たりません。印象論ではなく、公式の採択リストを自分で数えた結果です。
合同会社サモテクは2026年7月、国の補助金の公式な採択者一覧PDFから、東海3県(愛知・岐阜・三重)の採択を抽出しました。そのうち、事業計画名に建設・施工・土木・塗装・鈑金・BIM・職人といった言葉を含む「建設・現場系」の採択を数えると、デジタル化(DX)を掲げた採択が17件ありました。ところが、そのうち事業計画名に「AI」と明記していた会社は、1件もありませんでした(AI明記0件)。
念のため、方法論を正直に書きます。判定は事業計画名に「AI」や「DX」の表記があるかだけで行い、社名では判定していません。 IT導入補助金2025とデジタル化・AI導入補助金2026は事業計画名が非公表のため、母集団から除いています。「AI明記0件」は、事業計画名にAIと掲げた会社がいなかった、という意味です。実際にはAI要素を含むのに計画名に書かなかった会社もあるかもしれず、あくまで「計画名が公表されている採択」の中での傾向として読んでください。
では17件は何に予算を張っていたのか。事業計画名を公式PDFの記載のまま、地域とあわせて(社名は伏せて)並べます。
| 予算が向かった先 | 傾向 | 事業計画名の例(地域) |
|---|---|---|
| 塗装・加工の自動化(ロボット) | 目に見える設備への投資 | 「粉体塗装ロボット導入による金属製品塗装の省力化・生産性向上」(春日井市) |
| ICT施工・3D管理 | 現場管理のデジタル化 | 「ICT技術活用による3D施工統合管理システム導入計画」(伊賀市) |
| BIM・施工システム | 自社開発の仕組み化 | 「自社開発BIM統合施工システムによる省力化と生産性向上」(東員町) |
| 図面・書類の電子化 | 紙のデジタル化 | 「建設図面電子化の省力化セル構築による建設業DXサポート体制」(豊田市) |
| 土木現場の省力化 | 職人集団のDX | 「若き職人集団がDXを推進。土木現場の省力化技術革新へ挑戦」(鈴鹿市) |
※BIMは、建物を3次元モデルで表し、設計から施工・管理までを一つのデータでつなぐ仕組み。ICT施工は、測量や施工の情報をデジタルで扱い、機械や管理に活かすやり方を指します。
この一覧が示すのは、建設業は「ロボット・ICT・BIM・図面電子化」=目に見える設備と、紙のデジタル化には投資しているが、AIそのもの(判断・予測・生成)はまだ手前にある、ということです。DXは進んでいる。でも、そのDXはまだAIの手前で止まっています。
姉妹記事の製造業と比べると、差がくっきりします。同じ集計で製造・加工系を見ると、事業計画名にAIと明記した採択が22件あり、その約半数が外観検査(傷や欠けを見分ける品質チェック)に集中していました。 ものづくりの現場ではAIがすでに「お金を張る対象」なのに、建設ではまだ。この差こそが「建設のAIはこれから」を裏づけます。
この空白は、あなたにとって不利な話ではありません。まだ誰も本格的に始めていないなら、今から1工程だけ始めた会社が地域で先行できる、というだけの話です。
あわせて読みたい:製造業のAI導入|中小の町工場が「まず月数万円」から始める実践ガイド
なぜ建設業のAIは遅れて見えるのか(正直に)
建設業のAIが遅れて見えるのは、現場が屋外で毎回ちがい、多重下請けの構造もあって「AIが効きにくい」と思われてきたからです。ただし、効きにくい現場作業と、よく効く事務や判断を分ければ、今すぐ効く場所があります。
建設の現場作業は、工場の生産ラインのように毎回同じではありません。天候に左右され、同じ図面でも現場ごとに条件が変わります。「うちのような現場にAIは向かない」と感じるのは、誤解ではなく一理あります。
でも、ここに橋渡しがあります。会社の仕事は「現場作業」だけではありません。見積り、書類づくり、写真の整理、日報、工程の段取り——こうした事務と判断の部分は、実は毎回よく似ていて、AIがよく効く場所です。
書き手は以前、専門工事の会社と提携の話を進めたとき、その現場の実務をチェックリストで棚卸ししたことがあります。勝負を分けているのは、施工の腕だけではありませんでした。問い合わせから何日で見積りと訪問ができるかというレスポンスの速さ、施工の前後の写真をきちんと報告できるか、春から夏に集中する繁忙期の波をどうさばくか。 これらは「現場作業」ではなく「事務と段取り」であり、まさにAIで軽くできる部分です。
さらに、痛みの側も切実です。建設業の2024年問題とは、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制(原則、月45時間・年360時間)が適用され、人手不足のなかで工期と労働時間の両立が難しくなっている問題のことです。 職人さんの高齢化も進みます。積算が特定の一人に貼り付き、書類づくりが夜の残業になり、写真整理を家に持ち帰る。こうした「人に貼り付いた時間」を減らすことに、AIは向いています。
一方で、期待を煽りすぎないことも同じくらい大切です。AIをめぐっては、「これ一つで全部が自動になる」といった過大な表現が世の中にあふれています。AIをかなり使いこなす知人ですら、「AIで何でもできるという情報は過大表現だ」と戸惑っていたほどです。だから、この記事もサモテクの提案も、「できること」と「過大表現」を分けて誠実にお伝えすることを大事にしています。魔法ではなく道具として扱う。この姿勢が、疑心暗鬼になりやすい建設業のAI導入では一番の近道です。
建設業でAIが効く6つの使いどころ(やさしく)
建設業でAIが効くのは、見積・積算/図面と書類の読み取り/施工写真の整理・検査/安全管理/工程と人員の予測/書類の下書き、の6領域で、いずれも大企業の大規模な導入を「縮めて」使えます。現場の言葉で一つずつ見ていきます。
① 見積・積算
AI積算とは、図面やPDFから建材の数量を自動で拾い出し、見積の下書きを作るAIのやり方です。 積算はベテランの頭に頼りがちで、その人が忙しいと会社全体の見積りが止まります。大手は専用のAI積算ソフトを入れますが、中小はそこまで要りません。まずは過去の見積書と図面を生成AIに読ませ、概算の下書きを作らせるところから。ゼロから作るより下書きを直すほうが速い、と分かるはずです。
② 図面・書類の読み取り(AI-OCR)
AI-OCRとは、紙や手書きの書類、図面の文字を読み取って、パソコンで扱える文字データに変える技術です。 ここで一つ。昔のOCRと今のAI-OCRは、完全に別物です。 これは、書き手が現場のデジタル化を手伝うなかで何度も口にしてきた言葉です。何年か前に「読み取れず使い物にならなかった」という記憶で止まっている方は、ぜひもう一度試してください。手書きの伝票や紙の図面、レシートを文字にする精度は、以前とはまるで変わっています。
③ 施工写真の整理・検査
大量の現場写真をAIが自動で仕分けし、チェックの下ごしらえをする使い方です。現場写真の整理は、量が多いわりに単純で、夜や休日に持ち帰りがちな仕事の代表格。大手は配筋(鉄筋の配置)や出来形(できあがりの寸法)の検査そのものをAI画像検査に載せますが、中小はまず「撮った写真をどの工程・どの箇所のものか自動で仕分ける」だけでも整理の時間が大きく減ります。効きそうなら、検査のチェックへ広げられます。
④ 安全管理
危険検知とは、現場カメラの映像をAIが見張り、ヘルメット未着用や危険区域への立入りといった不安全な状態を自動で知らせるやり方です。 大手は大規模なカメラ網を張りますが、中小は、既にある1台のカメラ映像を一部だけAIで確認するところから。人の目をなくす話ではなく、見落としを一つ減らすもう一つの目として使うのが現実的です。
⑤ 工程・人員・需要の予測
過去の受注や工程のデータから、「繁忙期にどれだけ人が要るか」「この工程はいつ空くか」の見通しを立てる使い方です。多くの記事が薄くしか触れていない領域で、勘とベテランの記憶に頼っていた人繰りを数字で下支えします。中小はまず1つの現場や1つの繁忙期を対象に、表計算とAIで見える形にするところからで十分です。
⑥ 書類の下書き(生成AI)
生成AIとは、文章や要約を自動で作れるAIのことです。 日報、議事録、施工計画書、KY活動(危険予知活動)の書類、求人票、見積の説明文。こうした書類の下書きを生成AIに作らせる使い方です。6つのなかで、月数万円で今すぐ始められ、効果を一番実感しやすいのがここ。専用のシステムも設備も要りません。
まず月数万円でできること(設備や高い専用ソフトの前に)
建設業のAIは、数百万円の設備や専用ソフトを買う前に、月数万円から無料で試せることがたくさんあります。ここが、多くの記事が飛ばしている「最初の一歩」です。
その手前で、今週から踏める一歩を具体的に挙げます。
- 書類の下書きを生成AIに任せる。 日報、議事録、施工計画書、KY活動の書類、求人票、見積の説明文。頭のなかの内容を箇条書きで渡せば、下書きが返ってきます。仕事は、ゼロから書くことから下書きを直すことへ変わります。
- 紙・手書きの書類をAI-OCRで文字にする、小さな試し。 手書きの伝票やレシートを、まず数枚だけ読み取らせてみる。精度が使えそうかを、身銭を切る前に確かめられます。
- 現場写真の仕分けを生成AIで試す。 スマホに溜まった写真を工程や箇所ごとに仕分けさせる。整理の夜業を減らす一歩です。
この「人に貼り付いた事務を仕組みへ移す」考え方は、メニューにできます。合同会社サモテクがAI導入支援を初めて言葉にしたとき、AIで確実に軽くできる事務を8項目に絞りました。①問い合わせフォームからの通知の自動化 ②一次返信の下書き ③商談メモの要約 ④請求書・見積書・契約書の作成支援 ⑤議事録の文字起こしと要点抽出 ⑥定例レポートの集計 ⑦SNS投稿の予約 ⑧経費レシートのOCRと仕訳補助。 建設のバックオフィスに直結するのは、④の見積・請求・契約、⑧のレシート、⑤の議事録あたりです。訴求は「月数万円のランニング費用で、人件費に換算すれば月20〜40時間を圧縮する」。正直に添えると「完全に自動で全部やる」は過大表現ですが、人と組ませる前提の半自動なら、できることはかなり多い、というのが実感です。
小さく試すことの実利を、一つ実例で書きます。あるお客様との関係の入り口は、クラウドソーシング経由で受けた1万円・2時間のレクチャーでした。それが信頼になって追加の依頼に広がり、気づけば累計の受注額は85万円に育っていました。発注する側から見れば、「1万円で相手を試せた」という話でもあります。月数十万円の契約や数百万円の設備を決める前に、まず小さく1回試せるかどうかは、それだけの価値があります。
最後に、支援する側としての戒めも書きます。技術のある会社ほど、AI導入を「自社専用のシステムを作る」方向で考えがちです。サモテクも一度そうしかけ、レビューで「作るに逃げている」と指摘されました。既製ツールで今週から始められることを、わざわざゼロから作ろうとしていたのです。大きく作る前に、既製品で小さく1つ試す。作る力は、効くと分かってから使う。 これは発注する側にも当てはまります。「専用システムを作りましょう」と提案されたら、「本当に作る必要がありますか、既存のツールで今週から始められませんか」と一度聞いてみてください。
費用の地図:月数万円〜数百万円を一枚に
建設業のAI導入の費用は、月数万円で「試す」段階から数百万円の「設備や専用システムに載せる」段階まで、大きく3つに分かれます。この落差を一枚にしたのが、下の地図です。
「AI導入にいくらかかるか」の答えが難しいのは、月数千円の生成AIと数百万円の安全カメラが同じ「AI導入」と呼ばれているからです。下の地図で、自分がどの段階の話かを確かめてください。
| 段階 | 何をするか | 費用の目安 | 向いている状態 |
|---|---|---|---|
| 試す | 生成AIツール/AI-OCRのトライアル | 月0〜数万円 | まだ何が効くか分からない。とにかく小さく試したい |
| 仕組みにする | 外部の専門家が伴走して自社の業務にAIを組み込む | 月5〜22万円 | 効きそうな業務は見えたが、自社だけでは進まない |
| 設備・専用システムに載せる | 安全管理カメラ、AI積算・施工管理システムなど | 数十万〜数百万円 | 課題と要件が固まった。補助金の対象にもなりやすい |
まず「試す」段階から入って、効いたら「仕組みにする」、要件が固まったら「設備・専用システムに載せる」。 この順番で上っていくのが、中小の建設会社にとって無理のない道です。
真ん中の「仕組みにする」段階の相場は、名古屋の会社を公開料金で調べた別記事でも整理しています。伴走型のAI導入支援は、月5万円台から22万円ほどが目安です。会社ごとの比較はそちらに譲りますが、実務の注意を一つ。税込か税別か、1社あたりか1人あたりかは、会社によってバラバラです。 見積もりでは「税込ですか」「1社あたりか1人あたりか」の2問を必ず入れてください。単位が違うものを安い順に並べると、判断を誤ります。
いきなり全部やらない:失敗しない進め方
建設業のAI導入で失敗を避ける最大のコツは、今のやり方を一度に切り替えず、1つの業務で並行して試してから広げることです。そして「AIが動いた」をゴールにしないことです。
まず、一気に全部を切り替えないでください。 紙の日報も、いまの見積りのやり方も、当面は残したまま。1つの業務だけを選んで、新旧を1ヶ月ほど並行して動かし、問題がないと確認してから切り替える。この刻み方が、拒否反応を生みません。
現場や職人さんの「今のやり方を変えたくない」は、抵抗ではなく防衛です。忙しい現場で慣れた手順を急に変えるのは、それだけで負担だからです。だから習慣を壊さず、まず片隅で試す。うまくいった実感が先にあれば、人は自然と広げます。
そしてもう一つ、始める前に「何をもって成功とするか」を数字で決めてください。 「日報を書く時間が1件15分から3分になったら成功」というように。数字で決めておかないと、試すこと自体が目的になり、「PoC止まり」で終わります。PoC(概念実証)とは、本格導入の前に小さく試して効果が出るかを確かめる工程のこと。 「AIが動いた」ではなく、数字が動いたかどうかが本当のゴールです。
なお、「そもそもうちは、まだ紙とFAXが中心で、AI以前だ」という会社もあると思います。その場合は、AIの前に、まず紙とFAX、アナログのデジタル化から始めるほうが順番として正しいです。建設業のその段の話は別の記事にまとめています。焦ってAIに飛ばず、足元から積み上げてください。
あわせて読みたい:建設業の業務効率化・DXの進め方|2024年問題と人手不足への一手
AI導入に使える補助金【2026年・建設業】
建設業のAI導入には、2026年7月時点で国のデジタル化・AI導入補助金2026が新規に申請でき、AI積算ソフトや安全カメラなどの設備投資にはものづくり補助金や省力化投資補助金が向きます。ただし、順番を間違えないことが肝心です。
まず、名称の変更点から。「IT導入補助金」は「デジタル化・AI導入補助金」に名前が変わりました(令和7年度補正予算事業から)。去年の記憶で「IT導入補助金」を探すと情報にたどり着けないので、注意してください。
| 制度名 | 補助率 | 補助額 | 締切(2026年7月時点) | 向く用途 |
|---|---|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠) | 1/2以内(要件を満たす場合は2/3以内) | 5万円以上450万円以下 | 次回締切 2026年8月25日(火)17:00(以降おおむね1〜2か月ごとに設定) | 生成AIツール、施工管理へのAI組み込みなど |
| ものづくり補助金・中小企業省力化投資補助金 | 制度による | 制度による | 制度ごとに公募 | AI積算・安全カメラなど、設備投資型の導入 |
前の章で見た東海のデジタル化採択17件の多くは、塗装ロボットやICT施工、BIMといった設備投資型でした。数百万円のAI積算ソフトや安全カメラは、ものづくり補助金や省力化投資補助金の対象になりやすい領域。一方、月数万円の生成AIツールや業務へのAI組み込みは、デジタル化・AI導入補助金2026が入り口です。
補助金を使うときに、必ず押さえてほしい点が2つあります。
1つ目。交付の申請にはGビズID(国の行政サービスを一つのIDで使える仕組み)が必要で、取得には時間がかかります。 検討を始めた日に、まずGビズIDプライムを申請してください。ここで詰まって締切に間に合わない会社を、毎年見ます。
2つ目。「実質◯万円」という表現に気をつけてください。 補助金は対象になる場合があり、審査で不採択となることもあります。「実質◯万円」は採択されることを前提にした計算で、採択されなければ全額が自社の負担です。
そして最後に、順番の掟です。困っている業務を先に決めてから、使える補助金を当てる。 補助金ありきで買うと、使わないものを買って報告書だけが残ります。困っている工程が先、補助金はその後です。
あわせて読みたい:業務効率化の補助金・助成金ガイド
よくある質問
Q. 建設業でAIは具体的に何に使えますか?
大きく6つです。①見積・積算の下書き、②図面や書類の読み取り(AI-OCR)、③施工写真の整理・検査、④現場カメラでの安全管理、⑤工程・人員・需要の予測、⑥日報や議事録などの書類の下書き(生成AI)。月数万円で今すぐ始めやすいのは⑥です。
Q. 小さな工務店や一人親方でも、AI導入はできますか?いくらから?
できます。むしろ小さいほど、1つの業務が変わるだけで会社全体が動くので効果を実感しやすい。始まりは月0〜数万円の生成AIツールや、1万円前後の単発の相談から。数百万円の設備投資は、効きそうだと分かってからで構いません。
Q. 職人が高齢で、パソコンが苦手でも大丈夫ですか?
大丈夫です。ツールを納品して終わりにする支援では、パソコンが苦手な現場は回りません。合同会社サモテクが大切にしているのは「翻訳力」——操作の説明も現場の皆さまが分かる言葉で行い、全員が使えるようになるまで伴走する。 これが、IT担当がいない会社でAIが根づく条件です。
Q. 図面や手書きの書類も、AIで読み取れますか?
読み取れます。大事なのは、昔のOCRと今のAI-OCRは完全に別物だということ。何年か前に「読み取れず使えなかった」という記憶で止まっているなら、手書きの伝票や紙の図面、レシートで、もう一度試す価値があります。精度は以前とはまるで違います。
Q. 現場作業そのもの(施工)は、AIで自動化できますか?
正直に言うと、施工そのものの自動化は、中小の現場では現実的ではありません。屋外で毎回条件が変わるからです。AIが先に効くのは、施工ではなくその周りの事務や判断——見積り、書類づくり、写真の整理、工程の見通しです。
Q. 建設業の2024年問題に、AIはどう効きますか?
建設業の2024年問題とは、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、人手不足のなかで工期と労働時間の両立が難しくなっている問題のことです。AIは、現場作業を速くする道具ではなく、残業になりがちな事務を圧縮する道具として効きます。日報・書類・写真整理・積算の下ごしらえにかかる時間を減らすことが、労働時間の短縮に直結します。
Q. 建設業のAI導入に使える補助金はありますか?
2026年7月時点では、国のデジタル化・AI導入補助金2026が新規に申請できます(旧IT導入補助金・令和7年度補正予算事業から名称変更)。通常枠は補助率1/2以内(要件を満たせば2/3以内)、補助額5万円以上450万円以下、次回締切は2026年8月25日(火)17:00です。AI積算や安全カメラなどの設備投資は、ものづくり補助金や省力化投資補助金が向きます。申請にはGビズIDが必要なので、先に取得してください。
Q. 何から始めればいいですか?
ツール選びから始めないでください。まず自社で最も時間を取られている業務を3つ書き出し、そのうち1つだけを選ぶ。その業務を、生成AIなど既存のツールで今週から試せないか確かめる。自分たちだけでは進まないと分かった時点で、伴走してくれる相手に相談する。ツールから入ると、使わないツールが増えるだけで終わります。
まとめ:建設業のAIは「まだ空白」だからこそ、今、一番手間な事務から

建設業のAI導入は、会社全体を一度に変える話ではありません。一番手間のかかっている1つの業務が変わるかどうかの話です。そして今は、まだ誰も本格的には始めていない「空白」の時期です。もう一度、進め方を整理します。
- 自分の座標を決める。 6つの使いどころのどれか、3つの規模(試す/仕組みにする/設備に載せる)のどれか。
- 月数万円で試す。 いきなり設備を買わず、生成AIやAI-OCRで小さく確かめる。まずは書類の下書きから。
- 効いたら広げる。 成果が数字で出たら、仕組みにし、必要なら設備投資と補助金へ進む。
「もう遅い」ではありません。東海の独自データが示すとおり、建設のAIはまだこれから。今、一番手間な事務から1つだけ始めた会社が、地域で先を行きます。自社で一番時間を取られている業務を1つだけ思い浮かべてみてください。日報でも、見積りでも、現場写真の整理でも構いません。建設業のAI導入は、その1つから始まります。
合同会社サモテクは、愛知県名古屋市を拠点に、中小企業と一人社長の伴走を中心に、AI研修・社外AI顧問・AIエージェント受託開発まで手がけています。建設業・不動産業のホームページ制作や、建設会社向けのAI動画制作にも実際に関わってきました。特定のAI製品を推したり、大きく作らせたりはしません。「うちの現場の何をAIにできるのか分からない」という段階の相談も受けています。
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