事業展開等リスキリング支援コースとは?8月改正と対象になるAI研修

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「生成AIの研修は、助成金で75%戻ります」。研修会社からそう聞いて、この制度の名前を調べている方も多いと思います。

ところが、2026年8月3日の改正で、条件が大きく変わりました。「AIの一般的な使い方」を学ぶ研修は、助成の対象外になったのです。同じ「AI研修」でも、作り方しだいで対象にも対象外にもなります。

私たち合同会社サモテクは、名古屋で中小企業のAI研修をしています。改正のリーフレットが出た直後に、自社の研修を「業種ごと」ではなく「職種と具体的な仕事ごと」に組み直しました。この記事では、そのときに厚生労働省の資料を読み込んで分かったことを、研修を作る側の目線でまとめます。

この記事の結論(2026年9月30日確認)
– 中小企業なら、研修費の75%と、研修中の賃金として1人1時間1,000円が助成されます(上限あり・後払い)
– 2026年8月3日から、職種を問わないAI研修は対象外です。職種と仕事を特定した研修なら、対象になりえます
– 令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置です。計画届は、研修開始日の1か月前までに出します

この記事でわかること
– 事業展開等リスキリング支援コースの仕組みと、助成率・上限額
– 2026年の4回の改正と、8月3日の改正で対象外になった研修
– AI研修を「職種と仕事」で作り直す方法(7職種の例と、組み直す前と後の比較)
– 10時間の数え方と、12時間で組む時間割の例(営業・製造)
– 実質負担の早見表と、申請前の8問セルフ診断

制度の数字は、すべて厚生労働省の公式資料(2026年9月30日確認)にもとづいています。資料の名前とページは、記事の最後にまとめています。本文の「パンフレット」は、厚生労働省の「ご案内(詳細版)」令和8年8月3日版のことです。

職種と仕事に合わせたサモテクのAI研修を見る

1. 事業展開等リスキリング支援コースとは

AIの知識を身につけて、事業の成長をめざす社員たちのイラスト

事業展開等リスキリング支援コースとは、新しい事業やDXなどに必要な専門的な知識・技能を社員に身につけさせる研修を、会社が計画に沿って行ったときに、研修の費用と研修中の賃金の一部を国が助成する制度です。

人材開発支援助成金の中の1つのコースで、厚生労働省が所管しています。助成を受けるのは会社(事業主)で、受講する社員個人ではありません。

対象になる研修の3つの型

研修は、ふだんの仕事と切り離して行う研修(OFF-JT)で、実際の訓練時間が10時間以上であることが条件です。そのうえで、次の3つのどれかに当てはまる必要があります。

型どんな研修か例
① 事業展開新しい事業・商品・サービスを始めるときや、業種を転換するときに必要な専門知識を学ぶ持ち帰り弁当の販売を始める飲食店が、予約の仕組みを学ぶ
② DX・GX社内のデジタル化(DX)や脱炭素化(GX)を進めるときに、その業務を担当する人が必要な専門知識を学ぶ営業担当者が、生成AIで提案書を作る方法を学ぶ
③ 人事・人材育成計画今後3年以内に就く予定の別の職務に必要な専門知識を学ぶ(2026年3月2日に追加)機械加工の担当者が、品質管理部門への異動に向けて検査の知識を学ぶ

「事業展開」には、まったく新しい分野への進出だけでなく、今の事業の中で、商品やサービスの作り方・提供の仕方を変える場合も含まれます。多くの中小企業にとって、生成AIの研修は②のDXか、①の「提供方法の変更」に当たることが多いでしょう。

令和4年度から8年度までの期間限定の制度

このコースは、厚生労働省のパンフレットの表紙で「令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設」と説明されています。コースの一覧表でも「令和8年度末までの時限措置」と書かれています(パンフレット2ページ)。令和8年度末は、2027年3月末です。期限の詳しい扱いは、10章で説明します。

2. いくら助成される?助成率・上限と、実質負担の早見表

「結局、いくら戻るのか」。研修の費用を決める前に、ここをはっきりさせておきましょう。

助成率と上限額

項目中小企業中小企業以外
研修費用(経費)の助成率75%60%
研修中の賃金の助成(1人1時間あたり)1,000円500円
1人あたりの経費の上限(研修時間10時間以上100時間未満)30万円20万円
1人あたりの経費の上限(100時間以上200時間未満)40万円25万円
1人あたりの経費の上限(200時間以上)50万円30万円
eラーニング・通信制の研修の上限(時間に関係なく一律)15万円10万円
  • eラーニング・通信制・定額制サービスの研修は、経費の助成だけで、賃金の助成はありません。
  • eラーニングと通信制の上限は、2026年4月8日の改正で、中小企業30万円から15万円に下がりました。通学の研修と組み合わせた場合も、15万円が適用されます。
  • 賃金の助成は、所定の労働時間内に行った研修の時間が対象です。時間外や休日に行った分は対象になりません。
  • 消費税も、対象となる経費に含まれます。
  • 定額制サービス(月額制の学び放題など)の研修は、経費の上限が1人1か月あたり2万円です(パンフレット38ページ)。
  • 1つの事業所が1年度に受けられる助成額は、1億円までです(パンフレット39ページ)。

実質負担の早見表(試算)

中小企業が、実際の訓練時間12時間の研修を行う場合で試算しました。研修は通学またはオンラインの同時双方向で、研修中の賃金は会社が通常どおり支払っている前提です。

パターン研修費の総額経費の助成研修費の自己負担賃金の助成
A. 1人10万円の研修・5名50万円37.5万円(75%)12.5万円6万円
B. 1人20万円の研修・5名100万円75万円(75%)25万円6万円
B’. 同じ研修・3名60万円45万円(75%)15万円3.6万円
B”. 同じ研修・10名200万円150万円(75%)50万円12万円
C. 1人40万円の研修・5名200万円150万円(上限30万円×5名)50万円6万円
D. 1人20万円のeラーニング・5名100万円75万円(上限15万円×5名)25万円なし
E. 自社で主催し、講師謝金50万円(税込)・5名50万円27万円(対象は36万円まで)23万円6万円

※ A〜Dは研修会社の研修に社員を参加させる形(事業外訓練)、Eは自社で研修を主催して講師を招く形(事業内訓練)です。Eは、講師謝金の対象が1時間3万円までのため、12時間で36万円が上限になります(8章)。会場費など、講師謝金以外の経費は含めていません。
※ 賃金の助成は、研修中に会社が払っている給料の一部が戻るものです。たとえば5名なら、12時間×1,000円×5名=6万円です。研修費の自己負担とは別に、研修中の給料そのものは会社が払っています。
※ これは助成が認められた場合の試算です。事業内・事業外のどちらに当たるか、どの経費が対象になるかを含め、実際の助成額は労働局の審査で決まります。減ったり、支給されなかったりすることもあります。
※ 助成は後払いです。研修費はいったん会社が全額を支払います。

効いているのは「上限」ではなく「助成率」

表のCは、1人あたり40万円で、経費の助成がちょうど上限の30万円に届く例です。これより高い研修にすると、超えた分には助成がなく、助成の割合が下がります(たとえば1人50万円なら、助成は30万円で60%です)。

私たちも最初は、「上限の30万円を使い切れる研修を組むのが得ではないか」と考えました。ところが計算してみると、12時間の研修で上限を使い切るには、1人40万円、5名で200万円の研修が必要です。中小企業にとって、現実的な金額ではありません。実際に効いているのは、上限の金額ではなく、75%という助成率のほうでした。

対象になるかどうかは、金額ではなく、研修の中身と受講する社員の職務で決まります。金額より先に、研修の中身が対象になるかを確かめるのが順番です。

3. 2026年の改正の流れ

このコースは、2026年だけで4回変わっています。古い解説記事を見ると、今と違う条件が書かれていることがあるので注意してください。

図1 2026年の改正と、制度の期限

  1. 2026年3月2日3つ目の型「人事・人材育成計画に基づく訓練」が対象に追加
  2. 2026年4月8日eラーニング・通信制の上限が15万円に。自社と密接な関係にある講師・研修会社への支払いは対象外と明記
  3. 2026年5月14日支給申請のときに「受講料等の価格設定に関する疎明書」が必要に
  4. 2026年8月3日職種を問わないDX・GXの研修が対象外に。eラーニングは同じ人につき年度1回まで。不正受給の公表の特例を新設
  5. 2027年3月末(令和8年度末)このコースの時限措置の期限
施行日主な変更
2026年3月2日「人事・人材育成計画に基づく訓練」(3つ目の型)が対象に追加。中小企業は、事前に認定経営革新等支援機関の確認が必要
2026年4月8日eラーニング・通信制の経費の上限を一律15万円(中小企業)に引き下げ。定額制サービスは、10時間以上修了した人だけが対象に。設備投資加算を新設。自社と密接な関係にある講師や研修会社に払う費用は対象外と明記
2026年5月14日支給申請のときに「受講料等の価格設定に関する疎明書」(様式第28号)の提出が必要に。同じ内容の研修なのに、助成金を使うかどうかだけで受講料に差をつけているなど、受講料が著しく高く設定されている場合は、対象外になりえます(支給要領0502)
2026年8月3日DX・GXの研修でも、「職務に間接的に必要な内容」「職種を問わず共通の内容」は対象外に。eラーニングは同じ人につき年度1回まで。不正受給の公表の特例を新設

中でも影響が大きいのが、8月3日の改正です。次の章で詳しく見ます。

4. 8月3日の改正で対象外になった研修

「全社員にChatGPTの使い方を教えたい」。そう考えていた会社ほど、この改正の影響を受けます。

改正前から、職種を問わない一般的な研修は対象外でした。ただし、DX・GXに関する研修には、このルールが当てはめられていませんでした。2026年8月3日以降に出す計画では、DX・GXの研修であっても、次の2つは対象外になりました。

  • 職業・職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容のもの
  • 職業・職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの

厚生労働省が示した例

改正のリーフレットには、生成AIについて、はっきりした例が載っています。

対象になる例対象にならない例
生成AIを活用して、商品提案書の構成案づくり・文章生成・修正の方法を学ぶ、営業担当者向けの研修生成AIを利用するために、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ研修
自社のエネルギー使用量の集め方や、CO2排出量の計算手順を学ぶ研修(CO2の算定を担当する人が受ける場合)DXの概念や、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ研修
同じCO2算定の研修でも、人事や営業の担当者が受ける場合

違いは、「特定の職種の、具体的な仕事に、そのまま使える内容か」です。リーフレットでは、判断のポイントとして次の3つが示されています。

  1. 特定の職業・職務に必要な知識・技能を習得するためのものか
  2. マナー・リテラシー・概念の理解にとどまっていないか
  3. 研修の内容に合わせて、受講する社員を選んでいるか

3つ目が見落とされがちです。中身が職種向けでも、関係のない部署の社員まで一緒に受けさせると、その社員の分は対象外になりえます。

eラーニングは同じ人につき年度1回まで

同じ社員が助成を受けられる研修は、1年度に3回までです。そのうち、eラーニング(通学の研修との組み合わせも含む)は1回までになりました。年度は、支給申請をした日を基準に、4月1日から翌年3月31日で数えます。

経過措置があります

8月3日以降に計画届を出した場合でも、たとえば研修会社との契約や申し込みを8月2日以前に済ませていた事業外訓練には、改正前のルールが適用されます。契約日や申込日が分かる書類を、計画届に添えて出します。当てはまりそうな場合は、管轄の労働局に確認してください。

あわせて読みたい:AI研修が「意味ない」と言われる理由|現場で使われる研修の条件

5. AI研修は「業種」ではなく「職種と仕事」で作り直す

私たちは改正のリーフレットを読んだ直後に、自社の研修を点検しました。そこで分かったのは、「◯◯業向けのAI研修」という切り方では足りないということです。

判定のテストで、一度落ちた例

新しい研修を設計するとき、社内で作った判定の手順にかけてみました。「製造業向けのAI研修」は、職種が特定できず、判定で落ちました。業種だけでは、「その業種の人なら誰でも受けられる、共通の内容」と見なされるおそれがあるためです。

そこで、「製造現場の管理者向け:日報と勤怠のデータ化研修(12時間)」まで絞りました。誰が(製造現場の管理者)、どの仕事を(日報と勤怠)、どう変えるか(データ化)が決まると、判断の3つのポイントを満たしやすくなります。

このテストで見つかったのは、研修名の問題だけではありません。私たちの設計の手順そのものに、3つの穴がありました。

  1. 業種を職種に割る手順が、書かれていなかった
  2. 研修を週1回にする理由が、書かれていなかった
  3. 見積もりの考え方がなかった

1つ目は次の「書き換えの3ステップ」に、2つ目は6章の「12時間で組む理由」に、3つ目は2章の「効いているのは助成率」の考え方にして、その場で直しました。

見分け方は簡単です。研修名から職種の名前を消しても成り立つなら、対象外を疑ってください。

組み直す前と後:どのコマを置き換えたか

改正前のAI研修によく入っていたコマは、改正後の条件では、対象外の時間と見なされるおそれがあります。私たちは、次のように置き換えました。

改正前に入れがちだったコマ対象外の時間になりうる理由置き換えたコマ
「生成AIとは」の講義概念の理解にとどまる(公式の対象外例に近い)その職種の仕事の流れを分解し、AIに任せる部分を決める演習
プロンプトのコツ汎用的なプロンプトの作り方(公式の対象外例)その職種の仕事に絞った、指示文の型づくり
情報漏えいに気をつける講義職業人として共通のリテラシーに近い自社の資料を「入れてよい・注意・入れない」に仕分ける演習

どのコマも、「その職種の人が、その仕事で、手を動かす」形に変えています。講義の時間を減らし、演習の時間を増やすほうが、学んだことが仕事に残りやすいと考えています。

書き換えの3ステップ

今の研修を作り直すときは、次の順番で考えます。

  1. 職種を1つに決める:「社員」ではなく「営業担当者」「施工管理の担当者」のように、受講する人の職務を決める
  2. その職種の仕事を1つに決める:「業務効率化」ではなく「提案書づくり」「日報の集計」のように、具体的な作業まで絞る
  3. その仕事の「できあがりの形」と「確かめ方」を決める:研修の最後に何が作れるようになればよいか、AIの出力をどう確かめるかを決める

3つ目まで決まると、研修の時間割は自然に組めます。反対に、1つ目で「全社員」から動けない場合は、次の考え方がおすすめです。

全社員に受けさせたい場合は、2段に分ける

「まずは全社員に、AIの基本を知ってほしい」。この気持ちはもっともです。ただ、全社員向けの基本の研修は、改正後は対象外になる可能性が高い内容です。

そこで、研修を2段に分けます。

段対象内容助成金
1段目全社員AIで何ができるかを知り、社内のルールを共有する短い研修使わない(短時間・低額で行う)
2段目職種ごとの担当者その職種の仕事をAIで変える、10時間以上の実務研修条件を満たせば使える

全社員向けは短く安く、職種ごとの実務研修にだけ時間と費用をかける。このほうが、研修の効果も出やすく、助成金の条件にも沿います。

7つの職種での書き換え例

改正を受けて、私たちが組み直した研修の例です。どの研修も、研修の中に「その職種ならではの山場」を1回置いています。

分野対象になりにくい研修名職種と仕事に書き換えた例研修の山場
営業(業種を問わない)営業のための生成AI入門営業担当者向け:生成AIで商品提案書を作る提案書の誇張表現をチェックする
製造製造業向けAI研修製造現場の管理者向け:日報と勤怠のデータ化勤怠の集計を検算する
建設建設業のDX研修施工管理の担当者向け:工事写真の整理と報告書づくり報告書の誤りを見つける
会計事務所士業のためのAI活用セミナー事務担当者向け:月次資料づくり月次資料の誤りを見つける
歯科医院歯科のためのAI入門受付担当者向け:予約と口コミへの返信返信文の不適切な表現を直す
旅館観光業のAI研修フロント担当者向け:外国語での案内誤った案内のチェックと逆翻訳
介護介護現場のDX研修介護職員向け:記録と申し送りの作成記録の「事実」と「解釈」を分ける

※ 対象になるかどうかは、最終的に労働局が判断します。上の表は、判断のポイントに沿って設計した例です。

6. 10時間の数え方と、12時間で組む理由

「10時間ちょうどで組めばいい」。そう考えると、あとで困ることがあります。

10時間に含められる時間・含められない時間

条件の「10時間」は、研修の予定表の時間ではなく、実際の訓練時間で数えます(パンフレット29ページ)。

区分扱い
昼休み、移動時間含められない
対象外の内容(一般的なAIの概論、自社の機器の操作説明など)含められない
小休止(研修の合間の1回30分以下の休憩)1日あたり合計60分まで含められる(eラーニング等は不可)
開講式・閉講式・オリエンテーション計画届1回あたり合計60分まで含められる

さらに、通学やオンラインの同時双方向の研修では、実際の訓練時間の8割以上を受講した社員でなければ、対象になりません(パンフレット17ページ)。

私たちが12時間で組む理由

10時間ちょうどで組むと、途中の中断や、対象外と見なされた時間が少しでもあると、研修全体が条件を下回るおそれがあります。そこで私たちは、2時間の余裕を持たせて12時間で組んでいます。形は、1回3時間を週1回、4回です。週1回にしているのは、研修で学んだことを1週間、実際の仕事で試してから次の回に進めるためです。

なお、欠席は研修全体の時間ではなく、社員1人ずつ「8割以上受けたか」で見られます。3時間×4回の研修で1回まるごと休むと、9時間÷12時間=75%で、その社員は対象外になります。日程は、全員がそろう日を先に押さえておきましょう。

eラーニングは主軸にしていません。受講する社員の「年度1回」の枠を残しておくためです。

時間割の組み方の例

次の2つは、判断の3つのポイントと、パンフレットの「対象とならない研修」の例に沿って、改正後の条件に合わせて組んだ時間割の例です。研修の中で本番の成果物を作らないよう、演習には架空の案件や演習用のデータを使います。

例1:営業担当者向け「生成AIで商品提案書を作る」(12時間)

回内容ねらい
1回目(3時間)提案書づくりの流れを分解する/自社の資料を「AIに入れてよい・注意・入れない」の3つに仕分ける演習仕事の流れと、資料の扱い方を身につける
2回目(3時間)生成AIで、提案書の構成案と文章を作る(演習用の架空の案件)公式の対象例と同じ内容を、手を動かして身につける
3回目(3時間)誇張表現や事実の誤りを見つけて直す(検算演習)AIの答えをそのまま使わない力をつける
4回目(3時間)別の架空の案件で、構成案から修正までを一人で通す研修後に一人で回せるようにする

例2:製造現場の管理者向け「日報と勤怠のデータ化」(12時間)

回内容ねらい
1回目(3時間)日報・勤怠・点検表の作業の流れを分解する/資料の3分類演習(個人名と給与額の組み合わせは「入れない」側)AIに任せる部分と、入れてはいけない情報を見分ける
2回目(3時間)演習用の手書き日報の写真から、日付・作業・数量を表にする/現場の用語を指示文に組み込む読み取りの型をつくる
3回目(3時間)AIに勤怠を集計させ、残業時間と出勤日数を元の記録と1件ずつ突き合わせる(検算演習)給与に直結する数字を、人が確かめて確定する力をつける
4回目(3時間)演習用の日報の束で、読み取りから集計・検算までを一人で通す研修後に一人で回せるようにする

例2で、作業標準書やマニュアルを研修の中で作り上げる形にしていないのは、「品質管理のマニュアル等の作成や改善」が、対象とならない例に挙がっているためです(パンフレット28ページ)。

「AIの答えを確かめる」演習を入れる理由

3回目の検算演習では、架空の元資料と、わざと誤りを混ぜたAIの出力を組にして渡します。建設(工事報告書)と会計事務所(月次資料)向けに作った教材では、8か所に誤りを入れました。前月比の計算は正しいのに、元の売上高の転記が間違っている、というように、元の資料に戻らないと見抜けない誤りを混ぜています。

AIは、もっともらしい間違いを混ぜることがあります。「AIを使える」とは、AIに頼めることだけでなく、AIの答えを確かめられることです。この演習は、研修が「概念の理解」にとどまらず、仕事に直接使える技能を身につける内容であることを示す材料にもなります。

セキュリティも同じ考え方です。「情報漏えいに気をつけましょう」という講義は、職種を問わないリテラシーの研修に近くなります。自社の実物の資料を仕分ける演習にすると、仕事に直結し、現場にも残りやすくなります。

7. 見落としやすい落とし穴と、8問のセルフ診断

中身が職種向けになっていても、ほかの理由で対象外になることがあります。

研修の中で「本番の成果物」を作ると対象外になりうる

パンフレットでは、「通常の事業活動として遂行されるもの」が対象外とされています。例として、コンサルタントによる経営改善の指導、品質管理のマニュアル等の作成や改善、自社の業務で使う機器・端末の操作説明、自社製品の説明などが挙げられています(パンフレット28ページ)。

自社の資料を研修の題材にすること自体は、事業外訓練であれば認められる場合があります。ただし、それは「題材として取り上げるだけで、事業の成果物を作らない」場合に限られます。パンフレットには、次の例が載っています。

  • 自社の決算書(財務諸表)を使って、財務分析の方法を学ぶ研修は対象
  • その分析をもとに、経営改善計画を作る場合は対象外

AIに置きかえると、「研修の中で、実際にお客様へ出す提案書を完成させる」のは危険です。研修で作るのは演習用の下書きまでにして、本番の仕事は研修の外で行いましょう。

「実質無料」は危険なサイン

厚生労働省は「訓練経費は無料になりません」というリーフレットを出して、注意を呼びかけています。

  • 研修費は、会社が全額を負担していることが条件です。社員に一部でも負担させると、支給されません
  • 研修会社から返金、キャッシュバック、製品の無料提供などを受けると、支給されないか、不正受給になります
  • 不正受給になると、会社名・代表者名の公表、不正受給額の全額返還と2割相当額・延滞金の支払いなどの重い処分があります
  • 2026年8月3日以降の支給申請からは、不正が認められると、支給が決まる前であっても、自主申告をしていなければ原則として公表の対象になります(不支給や取り消しに関わる申請額の合計が100万円未満の場合などを除く。パンフレット9ページ、支給要領1002)

「実質無料」「負担ゼロ」「後からキャッシュバック」と言われたら、その研修は避けてください。

申請前の8問セルフ診断

次の8つのうち、1つでも「はい」があれば、そのままでは対象外や不支給になるおそれがあります。研修会社や社会保険労務士に確認してから進めましょう。

#質問はい/いいえ
1研修の対象が「全社員」になっていて、職種を絞っていない
2内容の中心が「AIとは」「プロンプトのコツ」など、職種を問わない話だ
3休憩・移動・対象外の内容を除くと、実際の訓練時間が10時間に届かない
4その社員は今年度すでに3回助成を受けている。または、eラーニングの研修で、今年度すでにeラーニングの助成を受けている
5研修の中で、実際に使う提案書・計画書・マニュアルなどの本番の成果物を完成させる
6内容が、自社の機器・システムの操作説明や、自社製品の説明になっている
7研修開始の1か月前を切ってから、計画届の準備を始めた
8研修会社から「実質無料」「キャッシュバック」「必ず通る」と言われた

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8. 事業内訓練と事業外訓練の違い

研修には、2つの実施の形があります。どちらかで、対象になる経費が変わります。

事業外訓練事業内訓練
形研修会社などが主催する研修に、社員を参加させる会社が自ら研修を主催し、外部の講師を招く
主な対象経費受講料・入学料・教科書代など(受講案内に定めたもの)外部講師への謝金・手当と旅費、会場の使用料、教科書・教材の購入費など
注意点自社の資料を題材にしてよい範囲の特例は、この形に限られる外部講師の謝金は、実際の訓練時間1時間あたり3万円(税込)が上限(パンフレット30ページ)

たとえば、12時間の研修を事業内訓練で行う場合、講師への謝金として対象になるのは最大で36万円(3万円×12時間)です。講師に50万円を支払っても、対象になるのは36万円までです。研修会社から見積もりを取るときは、どちらの形になるのかを先に確認しておきましょう。

どちらの形でも、講師や研修会社が自社と密接な関係にある場合、その費用は対象外です。たとえば、自社の代表者の配偶者や3親等以内の親族が講師を務める場合や、親会社・子会社の施設を借りる場合などが当たります(パンフレット31・32ページ)。

9. 申請の流れと、研修日から逆算したスケジュール

申請できる会社の条件

助成を受けられるのは、次のすべてを満たす会社です。

  • 雇用保険の適用事業所であること
  • 事業内職業能力開発計画(会社として社員をどう育てるかの方針)を作り、社員に知らせていること
  • 職業能力開発推進者(社内で研修を取りまとめる担当者)を選んでいること
  • 研修期間中も、社員に賃金を適正に支払っていること
  • 審査に必要な書類を5年間保存し、審査に協力すること

受講できるのは、その会社で雇用保険に入っている社員です。

主な書類

計画届を出すときに必ず出す書類は、次のとおりです(パンフレット42ページ)。

  • 職業訓練実施計画届(様式第1-1号)
  • 事業展開等実施計画(様式第1-3号)
  • 対象労働者一覧(様式第3-1号)
  • 事前確認書(様式第11号)
  • 研修のカリキュラムや受講案内など、研修の中身・日時・実際の訓練時間・受講料が分かる資料

このほか、事業内訓練ならOFF-JT講師要件確認書(様式第10号)、事業外訓練なら研修会社との契約書または受講案内と申込書の写しなど、研修の形に応じた書類を添えます。

研修の後の支給申請では、支給申請書、助成額を計算した書類、研修費の領収書などに加えて、「受講料等の価格設定に関する疎明書」(様式第28号)を出します。細かな添付書類は研修の形で変わるので、最新のパンフレットで確認してください。

提出のしかた

提出の方法は、労働局の窓口、郵送、電子申請の3つです(パンフレット41ページ)。

  • 郵送は、消印の日ではなく、労働局に届いた日が提出日になります。期限の直前に送るのは避けましょう
  • 電子申請は、厚生労働省の「雇用関係助成金ポータル」から行います。GビズIDの取得が必要です
  • 計画届を電子申請で出していない場合、その計画の変更届と支給申請も、電子申請では出せません。電子申請を使うなら、最初の計画届から使いましょう

手続きの流れ

順番やること期限
1研修の中身と受講者を決める(職種と仕事を特定する)研修開始の2か月前までが目安
2職業訓練実施計画届などを、管轄の労働局に出す研修開始日の6か月前から1か月前までの間
3研修を行う(研修費は会社が全額を支払う。出欠と実施時間を記録する)計画どおりに
4支給申請書を出す研修終了日の翌日から2か月以内
5労働局の審査を経て、助成金が支払われる審査しだい

研修を始めてから申請することはできません。 具体的な日付で見ると、次のようになります。

図2 2026年12月上旬に研修を始める場合の逆算スケジュール(例)

  1. 10月中研修の中身と受講者を決める(職種と仕事を特定する)
  2. 10月末まで(期限は11月上旬)計画届を労働局に出す。郵送は届いた日が提出日なので、余裕を持つ
  3. 12月上旬〜下旬研修を行う(1回3時間を週1回、4回)。研修費は会社が全額を支払う
  4. 研修終了の翌日から2か月以内(2027年2月下旬まで)支給申請を出す(疎明書も添える)
  5. 審査のあと助成金が支払われる(後払い)

2027年1月以降に始める研修は、支給申請が4月以降にかかることがあります。期限の扱い(10章)を、計画届の前に労働局へ確認してください。

3つ目の型(人事・人材育成計画)の追加手続き

3つ目の型を使う場合は、次の手続きが加わります。

  • 中小企業は、計画の内容について、事前に認定経営革新等支援機関の確認を受ける
  • 受講する社員から、研修を受けることの承諾書をもらう
  • 研修の終了後、予定していた職務に就かせたうえで、実施状況を労働局に報告する

予定していた職務に合理的な理由なく就かせなかった場合や、賃金を下げた場合は、支給されないか、取り消しになります。

10. いつまで使える?令和8年度末の期限と、令和9年度の見通し

「いつまで使えるのか」は、いちばん多い疑問の1つです。

期限は令和8年度末(2027年3月末)

1章で書いたとおり、このコースは「令和4年~8年度の期間限定」で、「令和8年度末までの時限措置」とされています。

ただし、「年度末」が、計画届を出す日・研修を始める日・支給を申請する日のどれを基準にするのかは、公式の資料に明記されていません。2027年の年明け以降に研修を予定している場合は、計画届を出す前に、管轄の労働局に確認してください。

令和9年度の概算要求では、名前が見当たらない

厚生労働省の「令和9年度概算要求」の資料では、人材開発支援助成金が「訓練実施コース」などに組み直されています。その中に「事業展開等リスキリング支援コース」の名前は見当たりません。一般的な訓練の経費の助成率は、中小企業で45%(賃金の引き上げなどの要件を満たせば60%)、中小企業以外で30%(同45%)とされています。これは、今の人材育成支援コースの一般的な訓練と同じ水準です(パンフレット2ページ)。

これは予算の要求の段階の資料で、確定した内容ではありません。ただ、「75%」という今の助成率が来年度も続く保証はない、ということは言えます。

それでも、期限を理由に研修を急ぐ必要はありません。 仕事に合わない研修を、助成金のために急いで受けても、現場では使われません。「どの職種の、どの仕事を変えたいか」が決まっている会社だけが、今年度中に検討すれば十分です。

11. 会社・研修会社・社会保険労務士の役割分担

「研修会社が、申請まで全部やってくれるのでは」。そう思われがちですが、役割は分かれています。

立場役割
会社(事業主)計画届と支給申請の責任者。研修費の全額負担、研修中の賃金の支払い
研修会社職種と仕事に合わせたカリキュラムの設計と実施、受講の記録など、申請に必要な資料の用意
社会保険労務士申請書類の作成と提出の代行(社会保険労務士の独占業務)
認定経営革新等支援機関3つ目の型を中小企業が使う場合の、計画の事前確認

助成金の申請書類を作って出す代行を、報酬を得て行えるのは、社会保険労務士法で社会保険労務士だけとされています。研修会社が「申請も全部こちらでやります」と言う場合は、誰が書類を作るのかを確かめてください。

サモテクは、研修の設計と実施を担当します。申請は、提携している社会保険労務士をご紹介できます。ご契約は御社と社会保険労務士の間で直接結んでいただき、社会保険労務士への報酬を研修費に混ぜることはしません。

また、研修会社の説明をそのまま信じないことも大切です。私たちが研修講師の募集要項を読んだある研修会社では、助成金の活用が事業の前提になっていました。しかも募集は8月の改正より前に書かれていて、「ツールの使い方」を教える研修は、そのままでは対象外になりうる状態でした。改正後の条件で対象になるかを、契約前に必ず確認しましょう。

あわせて読みたい:AI研修おすすめ比較|中小企業向け「現場が変わる」研修の選び方と費用相場

12. よくある質問

Q1. 事業展開等リスキリング支援コースとは何ですか?

人材開発支援助成金の1コースです。新しい事業、社内のDX・GX、今後就く予定の職務のいずれかに必要な専門知識を学ぶ、10時間以上の研修(ふだんの仕事と切り離して行うOFF-JT)を会社が計画的に行ったとき、研修費と研修中の賃金の一部が助成されます。中小企業の場合、研修費の75%と、1人1時間あたり1,000円の賃金が助成されます。

Q2. いつまで使えますか?

令和4年度から8年度までの期間限定の制度で、「令和8年度末までの時限措置」とされています。どの日付を基準にするかは公式資料に明記がないため、2027年に入ってからの研修を予定している場合は、計画届の前に労働局へ確認してください。

Q3. 全社員向けのChatGPT研修は対象になりますか?

対象外になる可能性が高いです。2026年8月3日の改正で、職種を問わない共通の内容や、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ研修は対象外とされました。職種と仕事を特定し、その仕事にそのまま使える内容にする必要があります。

Q4. eラーニングだけのAI研修でも使えますか?

使える場合がありますが、条件が厳しくなっています。経費の上限は時間に関係なく1人15万円(中小企業)で、賃金の助成はありません。また、同じ社員が助成を受けられるeラーニングは、年度1回までです。

Q5. 対象になる講座の一覧はありますか?

厚生労働省が講座を指定した一覧は、確認した範囲では見当たりません。講座の名前ではなく、研修の内容と、受講する社員の職務の組み合わせで判断されます。同じ講座でも、受講する人の職務によって対象かどうかが変わります。

Q6. 計画届はいつまでに、どこへ出しますか?

研修開始日の6か月前から1か月前までの間に、管轄の労働局へ出します。窓口・郵送・電子申請(雇用関係助成金ポータル。GビズIDが必要)のどれでも出せますが、郵送は労働局に届いた日が提出日です。研修を始めたあとに出しても、助成は受けられません。

Q7. 助成金はいつ支払われますか?

後払いです。研修が終わった日の翌日から2か月以内に支給申請を出し、労働局の審査を経て支払われます。支払いまでの期間は審査によって変わるため、その間の研修費は会社が立て替えることになります。

Q8. 社員が個人で受けたい研修にも使えますか?

このコースは、会社が社員に受けさせる研修が対象で、助成を受けるのは会社です。個人で学び直したい場合は、厚生労働省の「教育訓練給付」や、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」など、個人向けの制度があります。対象になる講座や条件はそれぞれ決まっているので、公式サイトで確認してください。

Q9. 申請は研修会社に代行してもらえますか?

申請書類の作成と提出を、報酬を得て代行できるのは社会保険労務士だけです。社会保険労務士でない研修会社が、報酬を得て申請を代行することはできません。研修会社と提携している社会保険労務士に依頼するか、会社が自ら申請します。

Q10. 「実質無料」「キャッシュバックあり」と言われました。大丈夫ですか?

避けてください。研修費は会社が全額を負担することが条件で、返金やキャッシュバックを受けると支給されないか、不正受給になります。厚生労働省も「訓練経費は無料になりません」と注意を呼びかけています。

Q11. パートやアルバイトの社員も対象になりますか?

雇用保険に入っている社員であれば、対象になりえます。受講する社員の職務と、研修の内容が合っていることが前提です。

Q12. 中小企業以外の会社も使えますか?

使えます。研修費の助成率は60%、賃金の助成は1人1時間あたり500円、1人あたりの上限額も中小企業より低く設定されています。

まとめ:助成金ありきで研修を選ばない

変えたい仕事を決め、研修・業務の仕組みづくり・成果へと進む流れと、助成金はその後押しという位置づけを表したイラスト

事業展開等リスキリング支援コースは、使い方しだいで研修費の大半を助成してもらえる制度です。ただし、2026年8月3日の改正で、「AIの一般的な使い方」を学ぶ研修は対象外になりました。

  • 職種と仕事を特定する:研修名から職種を消しても成り立つなら、対象外を疑う
  • 10時間ちょうどで組まない:休憩や欠席を考えて、12時間で組む
  • 本番の成果物は研修の外で:研修で作るのは演習用の下書きまで
  • 「実質無料」は選ばない:研修費は会社が全額を負担するのが条件
  • 期限を理由に急がない:変えたい仕事が決まっている会社だけが検討すればよい

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私たちは名古屋で50社以上の中小企業のAI導入を支援してきましたが、現場で使われ続けたのは、変えたい仕事がはっきりしていた会社でした。まず、自社のどの職種の、どの仕事をAIで変えたいかを1つ思い浮かべてみてください。それが決まれば、対象になる研修は自然に組み立てられます。

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参考にした資料(すべて2026年9月30日確認)


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